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M&A国富論

コーポレート・ガバナンスと国富つながりで、岩井克人先生のM&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことかを読んでみた。以下その概要と感想。


「現場が大混乱しているのになぜ政治や行政は手を打たないのか」

「おわりに」での書き始めの言葉だ。スティール・パートナーズ対ブルドック・ソースや、マッコーリー・グループ対日本空港ビルなど世間を騒がせる敵対的買収事件に対し、制度上の不備を放置してパッチワーク的な対応に終始した政治と行政。そして結果的に、敵対的買収のリスクにおびえる経営者への「株式持合いの推薦状」、制度的に穴だらけの日本の株式市場に目を付けた買収屋への「グリーンメールの招待状」を送ることになった最高裁の判決。これらに対する強い危機意識が、この本を書く原動力となった岩井先生の思いなのではなかろうか。

具体的な対象は違うものの、デフレの大不況に陥り日々失業者が増えているのに、机上の空論や個人攻撃、ポジショントークに明け暮れ、具体的なアクションをとらない日銀・与野党・霞ヶ関に対しても、そっくりそのまま同じメッセージを送りたい気持ちになる。

少しわき道に逸れたが、本書は、議論が発散するばかりで建設的な方向に進まない、敵対的買収やコーポレート・ガバナンスに関して、単にジャーナリスティックに事実を羅列するだけでなく、感情的な評論に終始するわけでもなく、本来会社とはどういう存在なのか、株主との関係はどうなっているのか、国民を豊かにするためにはどういう価値基準をおくべきなのかをきちんと定義した上で、具体的な政策提言に踏み込んだものだ。文章自体も非常に読みやすく、良書だと思う。

まず水と油のように思われている投資家サイドと経営者サイドの主張の違いを、以下のようにまとめている。

 会社は株主のモノにすぎないのだから、会社の買収には何の規制も必要ないとする株主主権原理主義者の主張があり、他方には、会社とは従業員が日々汗を流して働いている生産現場であって、ハゲタカのような買収屋に乗っ取られるなんてとんでもないという資本鎖国主義者の反論があります。


その上で、この本の目的がこう述べられている。

 必要なことは、株主主権原理主義者が主張するように会社買収を全く自由放任にすることでも、資本鎖国主義者が望むように買収そのものを全面的に否定することでもありあません。国富の増進という目的に向けて、良い経営者が選ばれ、悪い経営者が選ばれないための公平で効率的な買収制度を設計することなのです。


そして主張の異なる両者を結びつける価値判断基準として、「国富の増進」をあげている。

 会社は本来的な意味では人間ではありませんが、所有の主体、契約の主体、訴訟の主体になれるなど、さまざまな形で、人間と同様の権利を認められています。それは法律で特別に許されているからです。なぜなのでしょうか。(中略)
モノであるという意味では道端の石ころと変わらない会社が、なぜ法律上のヒトとして扱われるかといえば、それは、まさに付加価値を生み出し、国富を増進させる存在であるからなのです。すなわち、それ自体が目的である自然人とは違って、会社とは、国富という目的を増進するための手段にほかならないのです。これが私たちの議論の出発点です。


法律上でわざわざ「営利」法人としての株式会社の存在が許されているのは、経済的な意味での付加価値を生み出すことが求められているからだというのは、非常にわかりやすい。資本主義と株式会社制度を採用している国として、当然ともいえるこの原理原則を議論の出発点に置くことで、今後の展開にブレを生じさせなくしている。

次に、なぜ株主と経営者のあいだでこうも議論が噛み合わないのか、それを解きほぐす為、株式会社がどのような構造になっているかを「二階建て」というモデルで説明している。

 会社は街角の八百屋さんのような個人企業とは異なって、二階建ての構造になっています。八百屋さんのような個人企業は平屋建てです。そのオーナーが店先にあるリンゴやナシを直接所有しているのです。(中略)
それに対して、会社においては、株主が所有するのは会社資産ではありません。モノとしての会社です。そして、このモノとしての会社の別名が、株式です。会社とは、このように株主が会社をモノ(=株式)として所有する一方で、その会社は法律上の人(=法人)として機械設備などの物的資産を所有し、さらに従業員を中心とした人的資産をコントロールするという二階建ての構造をしています。
すなわち、株主とは、その二階建ての構造の二階に住む人たちなのです。(中略) そして、その二階部分だけを理論化したのが、いわゆるファイナンス理論です。(中略)
しかし、会社には一階部分があります。一階というのは、経営者を頂点とした組織としての会社です。組織の中にはもちろん法人としての会社が所有する機械設備などの物的資産がありますが、それと並んで、いや近年ではそれ以上に重要なのは人的資産としての従業員です。従業員がお互いにネットワークをつくって協力し、原材料を仕入れ、財やサービスを生産し、商品として販売しています。まさに、この一階の部分において、会社の価値が生み出されていくのです。そして、一家にいる人たちは、組織での活動のために自分の時間やエネルギーなど、さまざまなものを投入しています。彼らから見れば、当然、会社とは組織そのものであり、会社の中心は自分たちだということになります。働いている人のこうした率直な思いが、資本鎖国論や外資攘夷論に直結し、買収されるなんてとんでもない、ということになります。その頂点に立つ経営者であれば、なおさらです。


シンプルだけど、問題点と構造が浮き彫りになって、非常にわかりやすい。この二階建てモデルをもとに、

 二階の立場のみを主張すると、株主主権原理主義になり、一階の立場のみを強調すると、資本鎖国主義になります。したがって、会社買収のルールをどうするのかという話になったときに、株主原理主義のみにもとづいてルールをつくるのも、資本鎖国主義に基づいてルールをつくるのも、どちらも間違っています。二階と一階の両方のバランスをうまくとったルールが必要なのです。


として、具体的な敵対手金的買収の法整備に関する政策提言に踏み込んでいる。詳細については岩井先生の著書を読んで頂きたいが、冒頭で述べた敵対的買収で発生した問題点を例に挙げながら、それらが網羅的に解決できる案となっている。(と思う。M&Aは法制度に詳しくない自分としては、「すげー」と感心して読み進んだ。)
そして、議論は経営者の果たす役割へと進んでいく。

 法人としての会社には、経営者が絶対に必要であるだけでなく、経営者とは、会社の二階部分と一階部分の結節点に位置を占める存在だからです。二階部分においては、資金を提供してくれる株主の代理人として、一階部分では、実際に付加価値を生み出していく会社組織の代表者押して、業種・業態、物的資産・人的資産の性質、商品・サービスの内容、仕入れ先や顧客との交渉、銀行との関係、そしてマクロ的な経済環境など、さまざまな要素を考慮に入れながら、二階と一階のバランスを維持していかなければならないのです。それがガバナンスであり、その手腕によって、会社が生み出す付加価値が大きく変わっていくことになるのです。


また最後の方には、「産業資本主義」から「ポスト産業資本主義」へと移行した現代において、利潤を生み出す差異性はヒトの頭脳からしかつくりだすことが出来ず、ヒトが唯一の資本となってしまう時代におけるM&Aについて論じている。

「気概を持ってルールづくりを」の章では、以下のように書かれていた。

 私たちは、資本主義がさまざまな矛盾を抱えた経済社会体制であるということを認識したうえで、少なくとも真の意味でのポスト資本主義への道が突如開かれるまでは、それを少しでもましなものにするための制度設計を考え続けていかなければならないのです。(中略)
もし株式会社という制度が発明されていなければ、企業活動は、個人企業や組合(パートナーシップ)のような形態でしか可能でなく、資金調達の面からも組織能力の面からも、大きく制約を受けたに違いありません。そして、資本主義の発達による物質面からの指示がなければ、多くの社会はこれほどまでに近代化することはなかったでしょう。


欧米の住宅バブルが破裂したことをきっかけに世界信用危機から世界大不況へと突入している今の世界経済に対しても、まさに同じことが言えると思う。


いや、非常に勉強になりました。



tag: コーポレート・ガバナンス, 読書
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資産運用会社で働いています。株式市場とか、マクロ経済とか、思いつくままに覚え書きです。

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